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あれから20年…

1988年10月19日川崎球場、ロッテオリオンズvs近鉄バファローズ・ダブルヘッダー。

「10.19」と現在に語り継がれる名勝負、川崎球場で観戦した私には、この2試合の記憶が今でも鮮明によみがえってきます。

いつもは閑古鳥が鳴くこの川崎球場が、異様な熱気に包まれていました。この年パシフィックリーグ優勝争いはバファローズが驚異的な追い上げをみせ、この日行なわれる今季最終戦のWヘッダーでバファローズが2連勝すれば、首位ライオンズを抜き奇跡の逆転優勝となる大一番となったのです。

当時、関東地区ではほとんど生息が確認されていなかったバファローズファンという稀少生物であった私は、いてもたってもいられず大学4限・5限の必修科目を自主休講とし、川崎球場へ駆けつけたのでした(この欠席が響き単位取得に失敗、後の「来日」の原因となったのですが…)。

10月7日から始まった15連戦の最終日であり、選手達は疲労の極限状態、しかもダブルヘッダー、負けどころか引き分けでも優勝を逸するという厳しい条件の下、午後3時、運命の一日の幕が切って下ろされました。

第1試合は最下位のオリオンズが意地の抵抗をみせ、バファローズは苦戦を強いられます。

初回・愛甲がバファローズ先発・小野から2ランを放ち先制すると、オリオンズ先発の小川が4回までBu打線を完璧に封じます。鈴木貴久が5回にソロHRを放ち反撃を試みるも、7回に1点を追加され1-3と突き放されます。8回表に代打村上が執念のレフトオーバー2塁打を放ち3-3の同点に追いつきますが、「ダブルヘッダーの第1試合は延長戦なし」という回数の規定がバファローズの前に大きな壁となって立ちはだかります。

勝たなければ優勝できないというプレッシャーの中、バファローズ9回表の攻撃がいよいよ始まりました。

1死後淡口が2塁打を放ちその代走にスペシャリスト佐藤。マウンドは守護神・牛島。打者は5回にHRを放った鈴木貴久。鈴木が放った打球はライト前へ。2塁ランナー佐藤は三塁を回る。ライトから矢のような好返球が…。本塁突入を躊躇した佐藤は三本間に挟まれ、なんとタッチアウト…。

あぁ…。バファローズファンの誰もが、この瞬間優勝をあきらめたことでしょう。

しかし、バファローズは優勝をあきらめていませんでした。先ほどの挟殺プレーの隙に打者走者・鈴木貴久は2塁まで進塁しており、この本当の最後のチャンスに、仰木彬監督はベテラン梨田昌孝を代打に送ったのです。

牛島の渾身のインハイストレート。その速球を打ち返した梨田の打球は、梨田いやバファローズの勝利への執念・魂を宿したかのように内野手の頭を越え、センター前にポトリと落ちました。鈴木貴久は一気にホームへ突入。センターからは好返球。鈴木は捕手・袴田のタッチをかいくぐる。判定は…セーフ。

抱き合い転げまわる鈴木貴久と中西太ヘッドコーチ…。

バファローズは土壇場で遂に「1点」をもぎ取ることに成功しました。

その裏、判定に冷静さを失い制御不能となってしまったリリーフエース吉井が無死1塁のピンチを招いたところで、2日前に完投勝利を飾ったエース阿波野がマウンドに立ちます。しかし疲労困憊で本調子ではない阿波野は2死満塁のピンチを招いてしまいます。打者は森田。この絶体絶命の場面に、阿波野は一世一代の魂のピッチングをみせます。

三球三振!

試合終了。4対3でバファローズ勝利。その時、午後6時21分。優勝の望みが第2試合へと受け継がれた瞬間でした。

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激闘となった第1試合の興奮が冷めやらぬ午後6時44分、第2試合が始まりました。

オリオンズは園川、バファローズは高柳が先発。両チームホームランの応酬で、試合は一進一退の緊迫した展開。3-3の同点で8回を迎えます。

8回表、主砲ブライアントが一発を放ち、4-3とバファローズがリードを奪うとその裏から必勝を期してエース阿波野を投入します。「阿波野ならやってくれる…」優勝ムードが高まり騒然とする川崎球場…。しかし阿波野にはもう余力が残っていませんでした。高沢にスクリューボールをレフトスタンドに運ばれ同点。首位打者を争う高沢・オリオンズの意地が、阿波野の微かな気力を打ち砕いた瞬間でした。

そして、この期に及んでまたまた規定の壁がバファローズに立ちはだかります。「Wヘッダーの第2試合は、最大12回まで延長を行なう。しかし試合時間4時間を経過した場合は、そのイニング終了時で打ち切り」という時間の規定が…。バファローズはオリオンズ以外にも目に見えない「時間」という敵にも打ち勝たねばならなかったのです。

4-4で迎えた9回裏、4時間まで残り30分を切った状況の中、今でも「あれがなかったら…」惜しまれる場面を迎えます。

阿波野の2塁牽制球による走者古川タッチアウトの判定に対して、オリオンズ有藤監督が走塁妨害ではないかと猛抗議を行なったのです。その時間、9分間…。スタンドからは「早くしてくれ~」という悲鳴にも似た絶叫が飛び交い、試合再開を待つバファローズナインの苛立ちと焦燥感が球場を包み込みました。

結局判定変わらず、試合は再開されました。9回裏オリオンズのスコアボードには0が刻まれましたが、その裏に隠された9分間という中断があり、その目に見えない時間という重圧はバファローズにのしかかることになりました。

10回表バファローズの攻撃。1死1塁で打席には、バファローズの快進撃を支え続けた羽田耕一。第1試合の梨田に続くベテラン勢のミラクルの再現なるかという期待に応えられず、打球はセカンド西村の正面へ。ダブルプレーが成立しチェンジとなった時、試合時間は3時間57分を経過していました。あと3分…。

10回裏、最後の守備につくバファローズナインの姿を、私は直視できませんでした。10回裏を3分で終わらせることなど不可能なのに、延長11回突入への微かな可能性を信じ、マウンド上で全力投球を見せた加藤・木下両投手の姿、小刻みに震えていたように見えた守備位置につく選手達の背中…。絶望感漂う中、バファローズナインはしっかりと最後まで試合を全うしました。

試合終了は午後10時56分。スコアは4対4。

バファローズは負けませんでしたが、優勝できませんでした。

10回裏から試合終了後のバファローズナインの挨拶までの間、私の瞳からは大粒の涙が溢れ顔はグシャグシャ、嗚咽と言葉にならない声で「ありがとう…」とつぶやき、「ありがとう~!」とグランドに向かって絶叫していたことを記憶しています。

首位ライオンズとのゲーム差は0、勝率は1厘4毛差という熾烈な戦いでした。

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…「10.19」と現在に語り継がれる名勝負の現場に立ち会えた事をとても幸せに感じています。

あれから20年たちますが、あれだけ壮絶で素晴らしい魂がゆさぶられるような感動を味わえた試合には、その後めぐり合っていませんね。

そろそろ「10.19」を越える試合を見てみたいと思う今日この頃です…。

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コメント

先日はコメントありがとうございました。おかげさまで楽しめました。さて、今日はあの日だったのかぁ。私はニュースステーションが好きだったので、テレビの前でかじりついてみていた思い出があります。梨田さんや羽田さんとか凄い個性のある雑草軍団みたいな近鉄はいまとなっては伝説みたいな感じです。そういえば西武対近鉄のブライアントも懐かしい。最近はダブルヘッダーが無いなぁ。確かに選手にとってはつらいけど、観てみたいです。

投稿: おく こと KEI Okumura | 2008年10月19日 21時08分

おくさん、コメントありがとうございます。

プロ野球ではこの「10.19」が、高校野球では「箕島vs星稜」が、大学野球では志村亮・鈴木哲・仲沢らが主力の時の塾野球部が完全全勝優勝を決めた「早慶戦」が、私の心に響いたベストゲームですね。

それにしても、あれからもう20年ですか…。年をとったなぁと苦笑いです。

また、何かありましたらコメントいただけるとうれしいです。

(お返事遅くなってすいませんでした。)

投稿: すーさん | 2008年10月20日 11時55分

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